暴落相場は買いのチャンスと考えるべきなのか?



暴落相場が起こると買い増ししたい初心者

ニュースや新聞で世界同時株安などと報道されるようになると多くのトレーダーがソワソワするようになります。安易な逆張りで参入している場合は、暴落は厳しい状態と思います。早めに逆張りで参入している場合には辛い事が想定されます。

単なる調整局面で、そのまま上昇トレンドを継続するのか、トレンドの転換点で、小規模の自律反発があるだけかも知れません。自律反発すらなく、そのまま下降トレンドに巻き込まれていく可能性もあります。

多くの場合は、『蛇ににらまれたカエル』状態で何も出ないと言われています。全く準備をしていないので何も出来ないのでしょう。

一方で暴落を経験していない初心者はトレンドの概念が欠落しているので、『バーゲンセールだぁ』と買い意欲満載です。含み損を抱える事が慢性化しているので、感覚が麻痺しているのでしょう。

上昇トレンドが続いているのであれば実力に関係無く、誰でも利益を出す事が出来ます。しかし運だけで利益を積み上げてきたトレーダーは実力の無い人から退場して行きます。勘違いだったと気付く時には手遅れです。

勘違いだと気付かずに相場環境が悪いと責任転嫁する場合も多いかも知れませんが、単純に知識と技術だ無いだけだと考えた方が良いと思います。

下落相場に遭遇すると退場する理由は簡単です。

 損切りが出来ない
 ナンピン買いをする

損切りが出来なくて退場する場合もありますが、多くはナンピン傷口を広げ退場していると考えています。

小規模の下落を何度も経験していると、『時間が経てば戻って来るだろう』と楽観している傾向があります。そして安易にナンピンをして退場となっていると思っています。

損失を多く出すトレーダーが多い=チャンスでもあります。ゼロサムゲームですから、当然の結果と言えば当然です。暴落は間違いなく値幅を取る事が出来るのですから参加しない理由はありません。

暴落が起こると・・・
実力の無いトレーダーから退場していく。ゼロサムゲームなのでチャンスと言える

損切りを含めてシステムトレードを考える

空売りの技術を身に付けておくことが基本になりますが、暴落の利点を利用して買いで利益を積み上げる方法も模索された時期がありました。

暴落で機能するロジックで、株価が売られ過ぎの状態からの自律反発を狙う手法です。乖離が補正されるのを狙うので、値幅を取る事は出来ませんが、圧倒的な勝率でマイナス分を吹き飛ばしていました。各社の雑誌で特集が組まれる事もあり、脚光を浴びていた手法でもあります。

上昇トレンドとは違い、自律反発を狙うので値幅が小さいのは勿論の事、期間も短くなります。素早く入って素早く逃げる事が重要になります。

『暴落は買いのチャンスだ』『バーゲンセールだ』とイメージ先行トレーダーとは一線を画す事で話題になっていた手法です。

エントリーからイグジットまでが一貫した売買ルールで完了しており、勝率、利益率、ドローダウン・・・客観的な数値で成績が評価されています。

システムトレードではバックテストの概念があり、過去のレートを使って優位性と再現性が検証されます。同じ状況が出現した場合の行動指針を具体的な数値で決定する物です。

 テクニカル指標の組み合わせ
 フィルターの是非
 エントリー、イクジットの最適解
 ポジション管理

優位性があるとなれば、色々な角度から研究される事になります。元々値幅が取れるのですから、研究する価値がある事は薄々気が付いていたと思います。

誰がやっても同じ結果になるので、再現性の高さには定評がありました。

初心者でも上級者でも同じ状態になるのですから、システムトレードが市民権を得た事は良かったと思います。おおよそ10年前に検証された方法であり、ある事をきっかけに積極的に採用されなくなってしまった方法ですが、知る価値はあるトレード手法です。

比較的分かり易いテクニカル指標を使っていた事もあり、システムトレードを考える上で入り口としては、取り組みやすかったと思います。

最強のテクニカル指標の組み合わせを作る

次の3つのテクニカル指標を使い『3点チャージ法』と呼ばれていました。

 RSI
 移動平均乖離率
 VR

○○ショックでも耐えられると研究されたロジックが採用されていた事もあり、多くのトレーダーが自信を持ってシステムを運用していたと思います。

サブプライムショックやライブドアショックなど、〇〇ショックと付く場面では、1週間程度でサラリーマンの年収程度を稼ぎ出しているロジックもあり、某掲示板でも賑わっていたものです。

カスタマイズしたテクニカル指標の組み合わせが公開されている事もありまし、強烈に機能するので自慢大会の様子が見て取れます。暴落が年に数回来てくれれば、億トレーダーになれると豪語しているようなコメントも散見されました。

リバウンドを狙っているだけに、どこまで落ちるか分からない状態で、買いポジションを取るのですから、含み損を多く抱える事が基本的なスタンスです。精神的に耐えられた人と運用資金の多い人が勝ち組でした。

暴落時には全面安になるので、数銘柄で仕掛けるよりも多くの銘柄で仕掛けた方が利益が出るのは自然です。

バックテストの結果になりますが、実際に200万円の運用資金と10億円では、パフォーマンスの差が大きく、雲泥の差がありました。

暴落時に仕掛ける方法なので、ほとんど遭遇する事がありませんから、待望の暴落だ・・・と沸き立っていたものです。

多くは運用資金を多く準備出来ないですから、信用取引でレバレッジを掛けていました。信用取引でレバレッジを掛ける事の危険性は認識していたはずですが、ルールの優位性が抜群だったので、欲に負けていた状態だったと思います。

暴落はオシレーター系指標を使う

デメリットもあって、次のような条件を設定すると機能しませんでした。

 損切りを設定すると、殆どが損切りに掛かってしまい、全く機能しない。
 トレンド判定をすると、機会損失になってしまう。
 身の丈にあった金額でトレードする事。

要するに、基本通りにすると利益が出せない手法でした。従って、否定的な意見は一部ありましたが、圧倒的なパフォーマンスでその声を一蹴した手法です。

数銘柄だけ急落した場面では、不祥事で下がっているなどの原因が考えられるので、暴落銘柄が一定数量の基準を満たした場合だけ仕掛けるような研究もされていました。

採用するテクニカル指標も、オシレーター系を中心にして、最適な組み合わせが開示されたり、場合によっては『数10万円のノウハウ』として販売されている事もありました。

 テクニカル指標をボリンジャーバンドやストキャスティクスに変更する
 パラメータを組み換える
 利食いポイントを5%~20%の間で変化させてみる。

などなど・・・

テクニカルの負の側面としては、多くの人が使うと優位性が薄れると言われています。負の部分も経験出来た一面もあったと思います。

次の日の寄り付きで仕掛けるので、初値でいきなり高く寄り付き、ゆるやかに下落してから、反発するような銘柄が多くありました。

『これがマーケットインパクトか?』って某掲示板でも頻繁にログが上がっていたような状態で、多くの人が経験した事でしょう。

暴落相場でも損切りは必要

悲劇は突然やってきます。リーマンショックです。優位性が薄れていたとしても、余りある実績でしたから、疑う事をしなかったのでしょう。危機感は世間との乖離があったと思います。

過去にライブドアショック、サブプライムショック、ITバブル崩壊なども乗り越えていた・・・と言うよりも暴落で利益を積み上げる方法なので、歓迎ムードすらありました。

損切りは設定していますが、多くのトレードで利益を出している後に、残ったハズレを損切りする事でトレードは完了する手順でした。利益から損失を差し引きするだけですから、苦痛では無かったと思います。

リーマンショックでは、想定外の暴落に巻き込まれたので、利食いが出来る銘柄も無く、損切りするには大きすぎて切れないと言う非常事態で、どうしようも無かったと言います。

バックテストでは、想定外も含めて検証していたはずですが、100年に1度レベルまでは考えていなかったはずです。自分の知らないレベルの暴落だったので、この暴落は何かが違う・・・と察知しなければなりませんでした。

しかし、察知したとしてもシステムトレードで裁量を入れる事はご法度です。従って想定以上の含み損があった場合には1度失敗すると致命傷を負う可能性まで想定するべきでした。

利益を伸ばす事の優先順位がどうしても上位に来てしまうので、損切りの検証が十分で無かった事も致命傷を負った原因だと思います。最大ドローダウンを超えた場合には、損切りと決めていたと思いますが、実際に含み損の金額を見た時には躊躇せざるを得なかったでしょう。

リスクを指摘したトレーダーの予感が的中してしまった訳ですが、リーマン級の暴落を経験していないので仕方が無かったのでしょう。

基本をおろそかにしたツケは痛かったと思います。

暴落は空売りを基本に考える

リバウンド狙いは勝率が高く、幅広く安値を拾える事がメリットですが、逆張り手法である以上、底値が見えない状態で仕掛ける事になるので、1度の失敗が致命傷になる事を理解した上での運用が必要だと言えます。

暴落を経験していない初心者トレーダーであれば、値ごろ感から、暴落局面では安易な買い、ナンピンに走りがちです。

下落トレンドで安易な買いポジションを取る事は極力避ける事が生き残る為には必要だと言えます。

基本通りトレードするのであれば、空売りで利益を積み上げて、おまけで買いトレンドも取って行く・・・気持ちの余裕が勝ちトレーダーになる為には必要だと思います。

一定確率で暴落に遭遇する可能性はあります。そして暴落が莫大な利益を生んで来た歴史があります。暴落を見方に付けるには損切りの技術を磨く必要があります。

損切りをする技術があれば、売りで利益を出す事が出来ますし、底を打ってから余裕を持って買いで参入する事が出来ます。

先人が逆張りトレードの危険は見せてくれているので、もし採用するのであれば、同じ失敗をする事が無いようにする必要があるでしょう。