この記事で学べる事
長期投資で複利運用する事は最強なのか
長期投資をすると莫大な資産を築く事が出来ると言わんばかりに複利効果のシュミレーションをしている場面を目にする事が多くなります。遠い未来の事柄であれば、解決する手段として有効な方法です。
初心者をトレードの世界に踏み込ませるセールストークとしても使われる手法です。表面的な部分を理解するのであれば、非常に簡単な理論であるので利用されていると考えています。
複利効果が成立する条件は3つ
途中で消費しない事
多くの時間を見方に付ける事
『複利はアインシュタインが・・・』は有名な話なので割愛しますが、数学的に裏付けられている『確率100%の必然法則』です。理論なので誰が計算しても同じ結果になります。
アインシュタインのような著名人の名前が出てくると、深く考えずに盲信する事になるので注意が必要です。
長期投資をする事が必要条件のように解説している場合が多いのですが、運用期間の長い程、運用資産が多い程、効果が大きくなる事を示しているだけです。
現在からの積み重ねが将来に続きますから、長期投資であるとか短期投資であるとか期間の問題では無い事だけ意識すれば良いと思います。
初心者が長期投資をしていると複利効果の話をするのが『あるある』のように感じます。
長期投資であれば、企業の成長が利益になる事を意味しますから、地に足の着いた堅実な運用に感じます。20年~30年程度の長期でポジションを保有していれば、急落相場に遭遇する可能性が大きくなるのですが、その後の回復を見て成長しているようにみえます。
計測期間を長期にすると、期間あたりの標準偏差が平均値に近づく効果はありますが、『平均値に近くなる効果=リスクヘッジ』ではありません。金額ベースで考えると相対的に大きくなるので、リスクは大きくなります。
要するに、複利効果が大きくなる程、想定外の暴落に遭遇する確率と損失金額が大きくなると考える必要があります。長期間に渡ってリスクを取っていると考えるべきです。
現実的な話から離れて、過去のチャートから『ここで買っていれば大儲け』『経済は右肩上がりで成長している』と考えるようではいけません。
この『買っていたら』『買っていれば』の『タラレバ理論』は皮算用でしか無く、このような考えを持ち始めたら、非常に危険だと思います。
今後も同じような右肩上がりになるのかは分かりません。長期投資で一部の成功者がいる一方で多くの退場者がいる事を忘れてはいけません。
発言の解釈については諸説あります。資本主義経済の成長に対してのコメントだとも言われており、立場によって解釈が違うようです。
FX でもスワップやスキャルピングでの複利運用のシュミレーションがされる
FXの場合にはトレードの特性として敷居が低いので初心者の参入が多くなります。長期目線でも短期目線でも複利効果が力説されます。
始めは恐る恐る始めるのですが、少し経験をして知恵を付けてきた状態で、どうしたら稼げるのかを思案し始める頃に始まります。
子供の成長していく過程で現れる症状です。始めは学ぶ事が楽しいので、目の前に与えられた課題をこなす事で成長していく事に楽しさを感じます。しかしある程度すると学習すると差が出るようになります。
そうすると自分の出来ない事を正当化するようになります。出来ないよりも出来た方が良い事は分かるのですが、出来ない自分を正当化する行動を取ります。
勉強する事に何の意味があるのか?
計算ができなくたって・・・漢字が書けなくたって・・・歴史を覚えて何の意味がある・・・みたいな。周りの行動を否定する事によって安心したい心理が働くのでしょう。
大人になれば、自分も通って来た道なので、『あ~自分も同じ事を考えていたなぁ』と理解出来ますが、視野が狭い、経験値が足りてない状態では、難しい問題になります。
トレードでも同じ事が起こります。少し経験をすると現れる症状です。経験者であればすぐに分かると思うので考えてみてください。
外部サイトですが面白い計算ソフトです。単純に計算ボタンをクリックするだけでシュミレーションする事が出来ます。
1日に10pipsづつ複利で運用すると1年で1億を突破する理論です。複利効果を使えば、10万円が1億円になるので、素晴らしいですよね。
1日のボラティリティを考えれば、10pipsを抜きづ付ける事は可能に思えます。レートによって証拠金が変わるので、1年で一億に行かない場合もありますが、誤差で到達します。
真っ先に気が付くのは、取引枚数の限界点です。
現実に即して考えれば、取引業者の上限取引枚数が先に来ます。個人口座で取引出来る枚数はおおよそ300~500枚程度です。このような状態では、カバーが出来ないので、取引停止もしくは口座凍結になるでしょう。
つぎに気付くのは、勝率100%の運用が可能なのかと言う事です。未来のレートはランダムに動くので、それを100%の確率で予測する事は困難でしょう。
複利うんぬんを言う前に非常に難しいと考えるべきです。
数学的に裏付けされた理論に、現実を無視した理論との合わせ技なので、分からなくなってしまうのだと思います。
複利運用のデメリットは無いのか検証してみる
10年シュミレーション別窓で開きます
現実に沿ったシュミレーションと一般的に言われる複利運用の計算式での比較をしてみました。複利期間としては短いですが、10年間でシュミレーションしています。
どちらも年利平均8%の複利運用のグラフです。初期値と最終値が同じであれば、過程がどうであれ同じです。トレード経験者であれば、誤解をする事はありませんが、トレード経験が浅いと平均的に上昇するグラフを想像してしまいがちです。
何が違うのかと言うとリスクの違いがあるだけです。リスクは危険と理解されがちですが、正確には『可能性』を意味します。
右肩上がりのグラフはリスクゼロの状態を表しています。下振れする可能性がゼロを前提にした商品である事を示しています。バブル時代の銀行の定期預金の損益曲線がこのようになります。
リスク商品にも関わらず、リスクゼロの前提で計算する意味はありません。定率上昇の損益曲線を見ると『自分が何をしているのか分かっていないだろうなぁ』と思います。
リスクを想定しているグラフは、適当な数値を当てはめて、STDEVP関数で計算した結果なので、数値に意味はありません。
トレードは、上振れするか、下振れするか分からない可能性に対して、利益を得るリスク商品です。そのブレの大きさを受け入れる事を前提にしています。うまく上昇トレンドに乗る事が出来れば、利益を得る事が出来ますが、逆の場合は元本割れになります。
複利計算をしている人は、逆行リスクを過小評価している事が問題です。
1年目で50%のドローダウンをすると、元に戻すには100%の利益率を達成しなければならない事を示しています。基本的なトレードの教科書に書いてある通りです。
一度暴落に巻き込まれると回復するまでに非現実的な利回りが必要になっている事に気付くと思います。多くの場合には取り返す事が出来ません。
損切りの設定の前提条件として、自分が取れる実力以上に損切りの設定をしてはいけない理由がここにあります。
損切りをせずに耐えると、元に戻るまでの利回りがゼロになります。元に戻れば金銭的なダメージはゼロですが、時間のロスは取り返せません。必然的に無理なトレードが必要になります。無理なトレードが出来ない場合には、『死んだふり』で時間のロスを重ねる事になります。
トレードが出来なくなると運任せ以外の選択肢がなくなり、ギャンブルの要素が色濃くなります。複利効果は運用時間が長くなるほど効果が大きくなると言いながら、時間の無駄遣いをしてしまい、行動がともないません。
FXでスワップ運用をする際にも、複利効果のメリットを力説するのですが、ロスカットラインに引っかかるかどうかの運任せのトレードの実践がされます。小規模の暴落で退場して、上昇トレンドで新たなトレーダーが参加する事が繰り返されています。誰でも簡単に出来る手法は根強い人気があります。
1つの小さな積み重ね(微差)を積み重ねる事が10、20、30年続くと・・・大差になる。これが複利効果の本質なのですが、間違えたトレードを余儀なくなれます。
10年以上生き残るには、勝ち続けるか、含み損に耐えて『死んだふり』をしているようなトレーダーしかいなくなります。
10年に1度程度は大暴落に遭遇するので、30年間負けなしで勝ち続ける事は非常に難しいと思います。10年以上生き残れる手法が確立出来ていない状態で、20年・・・30年以上先の事をシュミレーションしても無意味です。
基本的なスキルを持っているトレーダーでも環境変化に対応出来ずに、退場していく厳しい世界ですから、長期間勝ち続ける事は難易度が高い事は言うまでもありません。
大きく逆行する場面に対応できる能力を身に付けてから運用方法の選択肢として考えるべきなのですが、経験に基づかない空論の積み重ねが自分のトレードを見失う結果になってしまっています。
単利運用よりもすごいですよ・・・って複利効果を力説するのですが、運用方法うんぬんの前にやる事があるように思います。現実逃避をした空論よりも、『基本のキ』から学ぶ必要があると思います。
複利効果のメリットはデメリットにもなり、単利であれば過去に増えた部分の利益に関しては無関係ですが、複利になると増えた部分にまで影響が及びます。メリットを強調し過ぎて基本的な部分が抜け落ちている事は非常に危険です。
30年勝ち続ける事が前提条件になると・・・タラレバを超えて『妄想理論』だと思います。
『やる前から儲かったことを想像する人は稼げない』がビジネスの常識です。トレードも例外ではありません。
複利効果を株トレード以外でも活用する事が出来る
複利効果を学ぶ事に意味が無いのかと言うとそうではありません。本質の部分をマネする事によって大きな成果をつなげる結果を出す事が出来る理論として活用されています。
新入社員のOJT資料なので使われるので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
一人の営業マンは一生懸命に営業している。
もう一方の営業マンは獲得した営業先に、自分を紹介してくれるように頼むと言う考え方です。
自分を売り込む事に成功している営業マンは、本人が営業する前に自分を売り込んでくれ、なおかつ自分に紹介してくれています。
自分の得意先が増えるようになると、加速度的に営業成績が伸びている。結果として複利効果が利いています。各社に営業する労力をする時間を確保しながら、同時に自分の代わりに営業してくれるのですから、効果は計り知れません。
1つの行動は同じであったとしても、幅を広げる工夫があるかどうかの違いですが、結果として『大差』になっている事を示しています。
『自分の代わりに売り込んでくれるような活動をしよう』『付加価値を付けた活動をしよう』と意味しているのですが、効果ばかりに目を奪われて活動がおろそかにならないようにしたいものです。
複利効果は最大の効果を出してくれるのですから、本質を理解して活用する事が出来れば非常に大きな武器になる理論です。
複利効果をFXに活用していく
通常であれば、運用効率を考えて、1つの通貨ペアに対して利益が最大になるように改善をしていく事になります。200pips→400pips・・・と改善する事をします。この効果を最大限にする為の工夫をします。
まずは、新しい通貨ペアにルールを横展開していく方法です。
新しい売買ルールを作る事と比較すれば、必要な労力は1/2程度は期待できるでしょう。慣れてくれば、1/10程度も可能かもしれません。通貨ペアの値動きは異なりますから、機会損失も少なくなりますし、条件が整っていなくても仕掛けるような間違った売買行動を取る必要が無い事もメリットとして考えています。
この条件が整った状態で改善の着手にかかります。
1つの通貨ペアに対する改善はボラティリティに依存するので、必然的に限界が出てしまいます。限界まで改善しようとすると、80点の売買ルールを改善して100点満点を目指しがちです。一定以上の改善は投入した時間に見合わない事が多くなります。
『率の改善』を複数の通貨ペアに適用して、大きな分母に対しての改善につなげる事が必要だと考えています。分母が大きくなると必然的に改善効果が大きくなります。
1つの通貨ペアの依存率が少なくなるので、限界まで改善する事に投入する時間は必然的に少なくなっています。見込みが無ければ早めに見切りを付ける事も可能です。
1つの改善の効果を考えれば『微差』でしかありませんが、トータルで考えると『大差』になります。大きくなった分母に対する『率』の改善は非常に大きなものになります。複利はどのように使うか考える事で可能性を広げる理論だと考えています。
複利的思考を運用に生かす事を検証してみる
運用資産に応じて、ロットの大きさを自動で調整する機能を搭載する事は可能です。複利運用モードと理解すれば良いと思います。
複利運用にすると序盤と終盤ではトレードの種類が違うくらい結果が暴れます。利益率の問題なので、損益曲線を見ると違和感がありませんが、吐き出されたデータを見ると想定外の最大ドローダウンを記録します。
初期値の数倍のロットで運用しているので、上下のブレ幅が大きすぎる結果になります。当然の事ながら、増加も減少もロットの大きさに比例して数倍になります。
何があるのか分からないのが相場ですから、安定感以上に優先すべき事は無いと考えます。
必要に応じて、ロットを上げる必要はありますが、利益を積み上げる事を最優先にするデメリットを考えると、無条件に複利運用を採用はしないので、今後も複利モードで運用する事は考えていません。