トレード初心者は長期投資をするべきでは無い・・・歴史から学ぼう



初心者はトレードが簡単であると評価する

どの分野でも失敗と成功の繰り返しが結果となります。漫画やドラマの世界であれば、失敗せずに成功ばかりでハッピーエンドになるかも知れませんが、現実ではそう簡単ではありません。

トレードも同様で失敗の経験から学び、成功の経験から学ぶ事になります。そして経験値として蓄積されていきます。

失敗の数が成功の度合いを決定します。失敗を次に生かす事によって成長していく事は歴史が証明しています。

この考え方を元にすれば、沢山の失敗を経験して、それの対策・改善をしていく事が、成長する為の必要条件になります。

しかしトレードの特性上、失敗・成功の判断が非常に難しい環境にあります。トレードの問題点は一人で完結する作業になるからに他なりません。自分以外には誰も間違いだと教えてくれません。自分で評価するので客観的な評価は出来ません。

知識不足、経験不足の状態で評価すれば正当な判断をする事は困難です。

 

我々は学生時代、社会人時代を経験してきているのですが、その都度間違いを指摘してもらえる環境に身を置いてきました。

学生時代においては、数学のような問題であれば、答えが一つなので成否判定は簡単ですが、答えが1つでは無い場合でも客観的な評価で、点数として数値で結果を知る事が出来ました。

社会人時代も同様で、事業計画と作業マニュアルや作業手順に沿って業務を進める事を求められます。問題があれば都度訂正して、間違いがあれば指摘をされる事によって実務の経験を積んでいます。

一方トレードでは、教えてくれる先生もいませんし、身の回りに経験者である先輩や上司もいません。学校には教員免許を持っていない先生はいませんが、トレードの世界では実績やスキルが不足している自称トレーダーや、トレードのプロでは無く、教材を売るプロも存在します。

トレード教材はありますが、現在も優位性があるのか、過去に通用しただけの方法なのか、運の要素を含んだ再現性の低い方法なのか、を判断するのが難しい状況です。

初心者がトレードで勝つ可能性は低いのですが、何故かトレードは簡単だと判断する事が多くなります。理由は簡単で、人間の持つ特性によるものです。

損切りをする事が失敗と評価されるのですが、損切りが出来ないので勝率100%です。

我々は失敗から多くの事を学び、同じ事を繰り返さない事がが必要条件だと知っているのですが、失敗をしないので成長する事が出来ません。

成長する為には、損を重ねて、損切りを経験して、自分はトレードの才能が無い事を早く気が付かなければなりません。自分しか教えてくれる人はいない事を肝に銘じる必要があります。

早く失敗する為には、結果が出るまでに時間が掛かる長期投資は不向きです。初心者は短期投資で失敗を繰り返す事で成長をする必要があります。

長期投資であっても短期投資であっても、自分の能力を過信するまでの過程はほぼ同じです。最終的に『損切り不要論』を導き出し、そして退場する結果となります。

トレードは一人で完結する作業
自分以外には誰も間違いだと教えてくれないので、失敗を重ねて自分にはトレードの能力が無い事に気が付かなければならない。そして努力をする必要がある

長期投資は損切りしない+ナンピンで勝率100%が可能

勝ちトレードの方法はいくつもありますが、負け方は同じです。『安く買って高く売る』と言う理論だけで突き進みます。

この表面的な理論しか知りませんから、上昇トレンドで買い、下降トレンドで売りが出来ません。上昇トレンドで買えずに下降トレンドで買います。レートの比較だけでポジションを取ります。もちろん損切りは出来ません。

第1ステップ
トレンド判定が出来ない
損切りが出来ない

損切りが出来ないので勝率100%です。ポジションの取り方がデタラメですから、含み損を抱える事が多くなります。ここで含み損に耐える経験を数多く出来ます。実際に早ければ当日に解消され、数日待てばプラスのレートになります。おおよそ1週間もすればプラスになりますし、長くても数週間もあれば戻ります。

含み損に耐えるのは精神的に辛いけれども、耐える事が出来ればプラスに出来ると気がついてしまいます。ここで『ポジポジ病』を発症します。どんなトレードもプラスに出来ますから、『耐える事が出来ればトレードは簡単である』と1つの結論を導き出します

これを繰り返していると指標の発表がある日も含まれるので、大きなボラティリティのある日も経験する事が出来ます。レートが大きく動くので心理的に揺さぶられますが、含み損に耐える事が出来れば、利益に変えられる事に自信を持つ事になります。

第2ステップ

ナンピンをする

どんな状況であっても、含み損に耐える事が出来ればレートは戻ってくると気がついてしまったので、逆行した時に早くプラス転換にする事が出来るようにナンピンを始めます。ナンピンは非常に効果が高く、少し戻しただけでプラスにする事が出来ます。ナンピンを否定されている事は知ってるはずですが、麻薬のような物です。失敗トレードを利益に変える事が出来る方法なので使わない手はあません。

ナンピンをすれば勝率100%の継続の難易度が一気に下がります。『安くなれば買い、そして逆行したらナンピンすれば良い』と自分の導き出した結論に自信を持ちだします。『損切り不要論』の完成です。

世間では損切りの必要性が言われている事は知っているはずですが、損切りをしている人を下に見るようになります。『長期目線で見れない人が損切りをする』のだと結論付けます。『長期トレードをすれば負けない』理論も完成させます。自分の理論に自信満々で、他人の言う事も耳に入りません。一般的に9割が負けてると言われている事は知っているはずですが、自分の勝率は100%。もう怖いもの無しです。

第3ステップ

大きなポジションを取る

含み益のポジションがある程度進むと、逆行して利益の目減りをする事に気が付きます。そのまま放置するとせっかくの含み損が減少してしまうので、手仕舞いをする必要がある事に気が付きます。小さく利益を積み上げる事で勝率を維持する事が出来ます。そして、『利小損大』の土台を作り上げてしまいます。

小さい利益を積み上げれば逆行する事が無いので、『無理をしなければ負けない』理論も完成させます。

勝率100%なので、次に取る行動は1つです。レバレッジを高くする暴挙に出ます。勝率100%なのにレバレッジを上げない理由など見当たりません。値幅を取れないのであれば、ポジションを大きくすれば、大きくした分だけ利益は大きくなります。無くなっても良い金額でトレードをする事を無視します。

こうなると手が付けられません。有頂天になり、給与と比較を始めてたりしてしまいます。時給換算で、〇〇円などと皮算用します。

これで『勝率100%で損切り不要』『逆行したらナンピン』『身の丈に合わないポジション』トレードの完成です。

危険の目安
損切りしないトレード、ナンピントレードを始めたら要注意です。

損切りしない投資法の結末

長期投資でも短期投資でもこのような形で進んで行くと思います。

しかしこのようなトレードは長く続きません。残念ながらマーケットはレンジ相場とトレンド相場の組み合わせです。

レンジ相場はおおよそ70~80%なので、いずれ終わりトレンド相場になります。逆行する事から始まるのですが、いつもと同じように含み損に耐える事を始めます。含み損に耐える事が利益になる事を知っているので、通常通りに放置します。トレードを甘く見ているトレーダーに危機感はありません。

また戻ってくるだろうと。

トレンド相場が始まれば戻ってきません。ナンピンで乗り切ろうとしますが、戻らない相場ではどうしようもありません。損切りをする事は狼狽売りと理解しているトレーダーにとって、損切りの選択肢はありません。

1回の失敗で致命傷を負います。今まで積み上げた利益を吹き飛ばす状態になってしまいます。場合によっては退場です。

致命傷を負った場合の選択肢は2択です。

 大きなポジションを取って取り返しに行く方法
 損切りの知識を付ける方法

多くの場合は過去の成功体験を選択します。勝率100%の『損切り不要のナンピン手法』の選択です。結果は・・・想像してください。

ここで何故成功体験を選択してしまうのかですが、理由は簡単ですよね。

自信を積み上げてきた事によって自分を正当化する道を選んでしまった事に他なりません。正当化すると『他の事は悪い事だ』という方程式が作り上げられます。

成功体験によって、他の選択肢を作る可能性を自ら放棄してしまいます。

自分の知らない事を悪い事だと批判的に見たり、自分の立ち位置を維持する為に、失敗を恐れるようになってしまいます。失敗を経験していないので、失敗に対する対処法を知りません。結果として、成功体験を継続する以外の選択肢がありません。

一般的な社会人であれば、人生の先輩から色々教わる事が出来ます。『若いうちは失敗を恐れるな、どんどんチャレンジせよ、責任はとってやるから』と。

失敗から学ぶ事が非常に多い事は経験上知っているのですが、それを生かす事が出来ていません。成功体験の積み上げが成功への近道だと勘違いしてしまいます。

しかし、トレードの世界では誰も教えてくれません。自分で知らない世界を探して、自分経験して、自分で解決していかなければなりません。

初心者がトレードで勝てない事は常識です。間違った成功体験をしているので、自分が初心者である事に気がつけないのです。

勝率100%はデメリットしかない
失敗の経験が無いので対処法が分からない

損切り不要のナンピン手法は最強なのか?

『損切り不要のナンピン手法』は昔からある手法で、初心者が10秒で思いつく方法だと思っています。初心者の思いつく方法で利益を出せる程、トレードは甘くありません。初心者の経験から生まれた手法に優位性がある方が不自然です。

初心者の退場する原因は、圧倒的な知識不足であると言われています。そして圧倒的な経験不足でもあります。

長期投資でも短期投資でも同じ道をたどる事が想定されます。

失敗をして次に生かす。これを繰り返す必要があるので、長期投資はするべきでは無いと考えています。経験をするには時間が必要です。

ステップ1~ステップ3まで進めてみたのですが、単純に『基本の逆を実行をしたらこうなります』と並べてみたに過ぎません。多くの場合は儲けたい気持ちが先走ってしまい、基本的な知識を学ぶ努力をせずに実践をしてしまった結果だと思います。

自分の経験から基本を導き出す事は非常に難しいです。基本を導き出せるのは一握りの秀才くらいしかいないでしょう。基本を導き出す事ですらこのような状態です。

まずは自分は凡人である事を認識する必要があります。そして基本的な技術を学ぶ必要がありますし、その環境も整えなければなりません。時間の確保も必要になります。

含み損から目をそらしたい気持ちは理解出来ますが、『損切りの先延ばし』や『ナンピン』は誰もが簡単に出来る方法です。『麻薬的手法』は現実逃避する事が出来ますが、一時的に助かったような錯覚を手に入れる事しか出来ません。一度使うと止められない悪魔の薬です。

麻薬は人を助ける事が出来ない薬です。そして一時的な錯覚と引き換えに取り返しの付かない結果をもたらす薬でもあります。

長期投資と短期投資は区別される事が多いですが、短い時間足を使って判断しているか、長い時間足を使っているかだけの違いでしか無く、トレードとしては同じです。トレンド相場も長い時間足で見れば、レンジ相場の一部ですから、特別な区別も必要無いでしょう。少し極論すぎますか?

長期投資の方が精神的には楽です。素早い判断が不要ですし、損切りの設定も”ゆるゆる”でも、依存度が低いので影響を受けにくいのが理由です。しかし、厳しい状況に置かれた方が人は成長しますし、時間の無駄遣いは取り返しが付かないですから、短期で勝負するべきでしょう。