投資初心者が投資信託を買ってはいけない理由とは



初心者は運用目標を定めずに購入している

ひと昔前であれば、銀行の定期預金に入れておけば年率数%の利息が付くので、特別に考えなくても良かったのですが、この超低金利下では元本保証だけでは不安が先に立ちます。

よくは分からないけれども『何か運用しなければいけない』と考えるのは自然な流れと言えます。

『いつまでに』『どの程度の運用利回りで』とまず考えなければいけないのですが、それすらも考えずに運用しようと考えてしまいます。

『投資信託購入理由調査』では多くの人が目標を定めずに投資をしていることが分かります。

出典 投資信託協会【報告書】投資信託に関するアンケート

結果として、

資産運用の知識は無いけれども、運用益は得たいという方針に寄り添うような形で、論理的にはうまい話があるはずもないのに、まるで儲かりそうな幻想を抱かせて、資産運用をさせてしまう現実があります。極端な事を言えば『プロが運用するので安心です』とか『初心者に最適です』と言うだけで上客になってもらえます。

資産運用の知識が無い場合には、金融機関の窓口に足を運べば、親切・丁寧に対応してもらえるので気軽に相談出来ます。相談も無料ですから至れり尽くせりなのではないでしょうか。

少し調べれば分かるような手数や利回りも知らずに相談してしまうようではカモになってしまいます。

何の知識も無い素人がのカモ・ネギ状態で目の前に座っているのですから、でたらめな理由でも、耳障りの良い言葉を並べるだけでも、自分たちに取って都合の良い商品を売る事が出来ます。

だますつもりは無いかも知れませんが、相手にとって最適では無い商品の確率が高いと考えた方が良いと思います。

初心者であったり、今後の使い道が決まってない資産だと言えば、真っ先にアクティブ型のファンドを薦められる事になります。

アクティブ型のファンドの9割がマイナス運用である

販売されている内訳を見ると

 インデックス型  7%程度
 アクティブ型   93%程度

になっています。殆どがアクティブ型ファンドですから当然と言えば当然かもしれません。

そもそもインデックス型ファンドとアクティブ型ファンドてどう違うのかと言う事になるのですが、ザックリ言ってしまうと

 インデックス型  特定の指数と同調するような運用成績をめざす
 アクティブ型   特定の指数と上回る成績ををめざす

2016年末までの運用成績の結果を見てみると、インデックスに届いていないアクティブ型ファンドが、大型株92%、中型株95%、小型株93%と9割以上が負けていると言う惨敗の状態です

この結果を見ると『効率的市場仮説』を裏付ける結果になっている事になります。市場平均以上の運用成績を上げるのはハードルが高いと言わざるを得ないと言う事です。

一言で言ってしまえば、運用成績を統計的に分析すると、プロも素人も差は無く、だれが運用しても同じ結果になるとの結論が証明された形と言えます。

運用成績を決めるのは運のみで、それ以外の条件は無いとなります。コイントスをして表ばかりが出たとしても、表を出すのが上手いとは言わないのと同意義ととらえます。

 

運用成績を見てみると、10年以上存続しているアクティブ型ファンドの10年間の平均リターンが年率1.4%であり、約30%がマイマス運用となっています。

インデックスはどうだったのかと言うと年率3%上昇しており、インデックスにも遠く及びません。

これは窓口で提示される運用成績とはあまりにもかけ離れた成績ですが、どうしてでしょう。

運用成績として提示しているのは、あるモデルケースでの運用と説明されるが、実は信託報酬などの手数料を支払っていない状態でのデータであると言われている事が原因です。

82%が販売会社系列の投信運用会社により運用されています。 系列の投信運用会社は、販売会社のために、売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っていると言えます。

これは金融庁も把握していて、問題視した金融庁長官がコメントをしています。

お客様が正しいことを知れば、現在作っている商品が売れなくなり、 ビジネスモデルが成り立たなくなると心配される金融機関の方がおられるかもしれません。 しかし、皆さん、考えてみてください。正しい金融知識を持った顧客には売りづらい商品を作って一般顧客に売るビジネス、手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果、 顧客の資産を増やすことが出来ないビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか?こうした商品を組成し、販売している金融機関の経営者は、社員に本当に仕事のやりがいを与えることが出来ているでしょうか?また、こうしたビジネスモデルは、果たして金融機関・金融グループの中長期的な価値向上につながっているのでしょうか?

相談窓口の人は『投資のプロ』では無く『販売のプロ』である

相談者は知識を持ち合わせていないですから、自分たちの会社の利益が出る物をいくつか提案すれば良いだけです。ポートフォリオ理論を持ち出して多くの商品を買わせるのも良し、ドルコスト平均法を持ち出して長期運用させるのも良しです。

まとまった資金の無い人でも、まとまった資金のある人でも、『投資信託は長期運用が基本ですから。。。』と言えば信託報酬を根こそぎ取る事が出来ます。

興味の無い客にも金融商品を購入させるテクニックを持っているような販売のプロが担当しているのですから、相談に来るような人に投資信託を買わせるのは朝飯前です。

相談者は投資のプロに相談に行っているつもりですが、大きな勘違いで金融商品の販売のプロに相談に行ってしまっています。窓口の人は決して投資のプロではありません。社員ですから、会社の利益を出す事に最善を尽くします。見ず知らずの人を稼がせる為ではありません。

含み益があれば、もっと積極的に運用しましょうと買い増しを提案し、含み損があれば、安い時が買い時ですからと買い増しを提案します。この程度であればまだ許せる範囲ですが、悪質なのは『運用成績が悪いですから別の商品に乗り換えましょう』と同じような商品を勧められて手数料を取る方法です。

販売する際にどの程度の説明をされているのか、もしくは説明されても理解出来ていないのか、は分かりませんが同じ仕組みの商品を購入させられてしまいます。

特に注意しなければいけないのは、『毎月分配型の投資信託』です。

利益が出しにくい『毎月分配型の投資信託』のからくり

多くの投資信託がアクティブ型である事は先に述べた通りですが、そのうちの半分程度が『毎月分配型の投資信託』です。分配金が無ければ元本に利益を乗せて行く形になるので、元本は大きくなっていきます。ここで分配金を出してしまうと元本が大きくなりませんから、利益が出しにくくなってしまいます。

少し考えれば分かるのですが、同じ利回りであれば元本が大きい方が利益が出しやすくなります。例えば

 100万円を運用して利益が出た分を引き出して使ってしまう。
 100万円を運用して利益が出た分を元本に加えて運用する。

この場合には元本が大きい方が手にする利益は大きくなります。100万円を運用した場合よりも200万円を同じ利回りで運用した方が多くなる事は簡単に分かります。利益を分配金として吐き出してしまうと複利効果を全く生かせません。

これで運用益が出ていれば良いのですが、出ていない場合は元本を切り崩して分配していくようになります。運用益が出せないばかりか元本割れになってしまいます。結局タコが自分の足を食べてしまっているので9割のファンドがマイナスになってしまいます

金融庁も以下の様に指摘しています。

一般に利益を分配せずに再投資するほうが投資効率は高くなるとされている。。。必ずしも顧客のニーズに沿った対応がとられていない
引用 金融庁 金融モニタリングレポート

 

顧客のニーズは多くの運用益を出してほしいという事なのに、分配金を支払ってしまって非効率な投資行動と解釈している訳です。

運用会社の言い分としては、運用レポートを定期的に発行しているので問題無いと主張していますが、顧客が理解していない以上問題であると言う指摘です。多くの顧客は分配金が支払われている事がマイナスに作用している事を理解していません。むしろ分配金が出るのでプラスであると誤解している場合も多いと言えます。

運用を丸投げしている状態の人が多いと推定されますし、レポートをじっくり読んでいないと理解する方が自然です。

説明を十分にしない方に問題があるのか、説明をされても理解出来ない方が問題なのかは分かりませんが、最低限の知識は持っておいた方が良いと思います。

投資初心者は丸投げ運用をしてしまう可能性が高いので、投資信託を買ってはいけないと考えています。初心者向けの金融商品は無いと理解した方が良いかも知れません。